建築専攻の学生がアースバックハウス作りを体験して感じたこと

実際にカラダを動かして経験したからこそ、座学だけでは学べない良さがある。

座学がまったく役に立たないわけではないが、体験を通して得られるものはとてつもなく価値のあるものだと、しみじみ感じています。

どうも、建築界のジャイアンことひもりん(@hinokinokibun)です。

 

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 先日、カルロスさんの繋がりで、アースバックハウス作りを体験できる機会があり、2日間お手伝いに行ってきました。場所は千葉県南房総市にある白浜フラワーパーク。

キャンプ場の利用客向けのトイレをアースバック工法で作っちゃいましょうってことでした。

 

カルロスさんのアースバックハウスについての記事

【参加無料】白浜フラワーパークで楽しすぎる「アースバックハウス作り」を体験しませんか? | カルロス天才.com

 

アースバックハウスについて

アースバックとは

アースバックとは土嚢(”どのう”水害のときに水を止めるために使ってるやつ)のこと。

アースバック工法は土嚢を積み上げて建築物をつくる工法のこと。

材料は主に土。人の手で作られ、耐震耐火に強いのが特徴。 

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アースバック工法で建てれた建物。

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こういった木造ハイブリット型もある。

(画像元:Earthbag | Kirk Nielsen)

 

アースバックハウスの凄いとこ

材料がシンプル

材料は土。今回は土に加え、砂利とセメントと消石灰と水を配合しました。

土と消石灰で岩のように頑丈になる。砂利、セメント、水はコンクリートの材料でもあるから、これらを配合することで強度が増すんだよね。

 

ヒトの手で簡単に作れる

木造だと、継手・仕口とか梁の太さとか、いろいろと考えないといけない。アースバックは土嚢を積んでいくだけなので、熟練した技術とかいらない。

 

耐震・耐火に強い

アースバックは壁が構造体になる(壁が建物の重さを支えるってこと。ちなみに木造は柱・梁)し、セメントで固めるので地震に非常に強い。いま住んでいる木造の家よりも7倍強いとも言われている。

材料も土なので、木造に比べると、はるかに燃えにくい。てか燃えない。

 

天然由来のモノでできる

仮に使わなくなっても。その土地の土だけを使っていれば、そのまま自然に返すこともできる。鉄骨やコンクリートで作られた住宅は廃棄物として処理されるので、アースバックは環境に非常に優しいし、コスパもよい。

マンションとか取り壊すの難しいから、空き家のまま放置されてしまうんだよね。

 

自然多い環境になじみやすい

アースバックは土嚢を積んでいって作るので、曲線が作りやすい。自然界には直線で形成させているものがない。だから曲線は自然になじみやすい。

マンションとか冷たく感じるのはそういうこと。

材料が土で、人の手で作れるってことは被災地とか、超絶田舎とかに活用できるから、大変すごいこと。でも、日本の建築基準法だとアースバック工法は認められていないだよね。ちなみに、カリフォルニアでは認められている。日本がもっともっとアグレッシブになったらいいのにね。

 

2日間のアースバックハウスの工程

2日間のアースバックハウス作りの工程は5つでした。

 

part1:土をほぐす作業

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最初は土を網にぶつけたり。

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網にスリスリしたり。効率よく土をほぐせれば何でもいいですが、スリスリが意外と良かったです。

 

part2:土嚢に入れる材料を配合する作業

かき混ぜてくれる機械に土・砂利・セメント・石灰を入れてかき混ぜていきます。

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途中で水を加えて、握ったときにダマになるくらいになれば、土嚢に入れる材料の完成です。

大人数で作業するなら、機械が多くてもいいもかもしれませんね。

 

part3:土嚢に材料を詰め込む作業

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先ほど作った材料を土嚢に詰めていきます。基本的に袋いっぱいに入れるのですが、カーブさせたいところや配管を通すところで、土の入れる量を調節していきます。

 

part4:土嚢を配置していく作業

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土嚢を木材で作った枠に当てはめて、配置する位置を決めます。

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場所が決まったら”ダンパー”という道具で、ひたすらトントンしていきます。この段階で土嚢はだいぶ固くなってます。おそらく今回の作業で一番大変。

 

part5:配置した土嚢を動かないように固定する作業

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上下の土嚢が動かないように有刺鉄線を巡らせていきます。土嚢にまっすぐ2週させるのがよくあるみたいですが、こんかいがグネグネさせるやり方でやってみました。

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 最後に鉄の棒を打ち付けて、完全に固定していきます。最初の棒は地面にも刺さるように1mという長さで打ち付け、3段目からは50cmの長さで土嚢どうしを固定していきました。

土嚢が固まる前に打ち付けないと大変なので、その日のうちにうちつけていきます。

 

あとはひたすら繰り返す!

あとはひたすら繰り返していきます。今回作っているアースバックハウスは24段が目標なので、そこまで繰り返す。

2日間でオトコ9人が作業して3段積み上げることができました。

積み上げた後は壁をセメントで固めたり、屋根を掛けたり、内装を仕上げたりという作業があります。

10人いたら、2~3か月で完成予定ですね。

たまたま大規模なものをつくっているので、多少時間がかかりますが、6畳分ぐらいだったら1か月ほどでできるのではないでしょうか。

 

アースバックハウス作りを通して感じたこと

大学で建築設計を学ぶときは、建築雑誌を読みまくり、アイデアを図面に起こし、模型を制作して評価を受ける。ただそれだけだった。

学生のあいだはそれだけでもいいのかもしれない。

 

わたしは実際に肌で感じ、自分の手を動かしたことによって、雑誌や教授の話を聞くよりもはるかに建築のオモシロさを実感できた。

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アースバックって、土臭いし、重いし、単純作業だし、大変なことだってたくさんあった。座学だとその大変さがまったく分からない。

苦労することにより、人が苦労して作り上げた建物のおかげで過ごしやすく生活できているんだ、というを再確認させられた。

この体験を通して、世の中にある情報を鵜呑みにするのではなく、実際に足を運び、体感することが座学より大事なんじゃないかと思いました。

 

またチャンスがあれば、完成まで携わってみようかと思います!